第17回 水とアンチエイジング
水なくしては生命の存在はありえません。このあまりにも自明のことが、日常生活の中の健康管理・アンチエイジングという視点からすると意外と軽んじられているかもしれません。今回は、健康・アンチエイジング面において「水」のもつ重要性について考えてみました。
成人の場合、身体の重量の約6割を水分が占めていることからもわかるように、水は、生命現象に必要不可欠であり、体内を循環して必要な栄養素や酸素を運び、不要な老廃物を体外に排出する役割を担っています。
人間が1日どのくらいの水分を摂取すべきかということについて、確固たる医学的研究報告はないのですが、米国のアンチエイジング医学専門医は毎日、体重1kgにつき30mlの水を飲むことが健康維持のために必要と唱える傾向にあります。成人男性の場合は、約2Lです。
お茶やコーヒーは、利尿作用があるので、これらは水分摂取量として、考えられてはいません。
健康ブームのためか、ミネラルウォーター市場では数百種ともいわれる水が販売されてます。では、どんな水を飲むことが健康によいのでしょうか?
日本の水道水は、基本的に微生物や重金属の汚染についてはクリアされていますが、微生物を除去する目的にて塩素を添加しています。塩素はいうまでもなく消毒剤です。低濃度とはいえ、消毒剤をそのまま体にとりこむのは少し疑問が残ります。また、塩素は浄水場の微生物処理の最終産物であるフミン質と反応して、トリハロメタンなどの発癌物質を作り出します。また、水道局が水質について責任を持っているのは公の水道管を走っている間のことで、私有地に入ってからの水道管については管轄外なのです。昔の建物で、「鉛管」を使っていたり、マンションの貯水槽からの水道水に、有害物質が混入している可能性もあります。こうしたことを考えると、水道の蛇口に浄水器を設置することは、より安全な水をのむためには望ましいといえます。
「水素水」と呼ばれる水が話題になっていますが、動物実験では、抗酸化効果と酸化ストレス障害の軽減効果が確認されていますが、人体に対してはまだ、研究段階です。
「アルカリイオン水」については歴史も長く、飲むのには適した水といえます。
また、「クラスター」と呼ばれる水分子の集合体にも注目が集まっています。クラスターが小さい方が細胞への出入りがしやすく、代謝を活発にするのではないかといわれています。
「ミネラルウォーター」の硬度は溶在している、カルシウムやマグネシウムといったミネラルの総量で決まります。カルシウムの多いものは動脈硬化予防効果や骨の健康に良いとされているますが、便秘を招くなどのデメリットもあります。一方、マグネシウムを多く含むものには、血圧降下作用や便秘の改善などの働きがあります。デトックスの目的で、蒸留水を飲む人もいるようなのですが、かなりの確率で下痢をするため、お勧めはできません。
腎臓疾患や心不全の患者さん、体が冷えやすい人やむくみやすい人など、水分摂取を控えたよい人もいます。
また、漢方では、「水毒」という考えがあり、水の飲みすぎは体に良くないといいます。
「産湯」から「死に水」に至るまで人間の一生は水なしには考えられません。健康維持、アンチエイジングのためには、自分の体に合った水をみつけることと体調に合わせた摂取水分量を決めることが極めて重要です。